3.2. 溶融塩発電炉:FUJI 

はじめに)

 増殖を断念した結果、炉本体よりも開発困難な連続化学処理装置を廃止します。炉内で一様に燃焼を進行させるように炉心設計を工夫して、炉内の黒鉛取り替え不要を実現します。これで、困難な保守作業が減り、炉本体は単純な溶融塩タンクです。また発熱密度が低くなり、熱媒体の核燃料塩を減らせ、黒鉛減速材割合が増大でき、中性子減速能が高められて、233U燃料の自給自足(燃えただけを炉内で再生)をほぼ実現できます。
 これは予想を大きく上回る理想的成果で、しかも 10−30万kWe規模の小型炉で実現可能です。これを「不二:FUJI」炉と命名しています。炉内は、燃料塩と容積の90%を占める裸の黒鉛のみから出来ています。核燃料は233Uを最初に供給するのみで、 不足してくるトリウム塩の追加(日量数百グラム)も半年に一度位で済みます。炉寿命の間、他の核物質は殆ど取扱不要で、解体後に全燃料塩を化学処理工場に持ち帰ればよいのです。核物質の路上輸送総量は大きく低減(数十分の一)されます。核燃料には 233U・235U・239Puのいずれも使用可能です。
 運転中は、気体放射能物質のクリプトン、キセノンおよびトリチウムを常時除去し、環境に放出されやすいこれらの放射能は事故が起きても最少限の放出に押さえられます。自己制御性・負荷追随性の強い炉の運転・保守作業は単純で、小型炉でも充分経済性を確保できます。
 この他多くの特長があります。熱効率を44%以上にでき、軽水炉より廃熱が半分近くに減ります。また、発電の代りに650℃位の工業熱利用が既に可能であり、さらに百度位高めるのは現在の設計でもほとんど問題なく、水素製造にも対応できると考えられます。 1,000℃以上の熱利用も将来可能性があります。
第4、5章で示すように、この単純化された炉に必要な技術の基本は開発を終了しています。

1)溶融塩炉とは
 溶融塩炉(Molten Salt Reactor : MSRは、フリーベ(LiF-BeF2、ただしLiは7Liに濃縮)に親物質としてトリウムをThF4の形で混入したフッ化物の混合溶融塩LiF-BeF2-ThF4(約500℃以上で液体)に、核分裂性物質として少量(重量で約1%)のUF4またはPuF3を混合したものを燃料とする液体燃料炉で、この混合物(燃料塩)と黒鉛減速材及び数本の制御棒(多くは黒鉛製)を並存させて炉心を構成し、通常、燃料塩自体を炉心外に循環させ、熱交換器を介して除熱する方式を取る炉である。
 炉心で発生した熱は、循環により炉外の熱交換器を介してNaBF4-NaF溶融塩からなる二次冷却材に伝熱し、さらにこれを熱源とする蒸気発生器によって発電用水蒸気を作る。この上記熱交換器は中間熱交換器と呼ばれ、ナトリウム冷却高速炉と似た構成となるが、溶融塩炉では高速炉以上の水蒸気温度(538℃位)と熱効率(44%位)が期待できる。

2)溶融塩炉の特徴
 溶融塩炉は、液体燃料炉であること、親物質として238Uでなく232Thを用いること等により、従来の低濃縮ウラン型やプルトニウム・ウラン型の固体燃料炉とは違った次のような特徴があり、その多くは利点となる。

燃料の成型加工が不要である。(燃料塩の製造・調整は必要であるが、それは比較的容易に出来る。)
燃料の放射線損傷・変形等を考慮する必要がなく、核物質の消耗分の追加注入のみで済み、燃料交換が不要である。
転換率が1.0近傍と高いので、核物質の追加もわずかな量で済み経済的である。
再処理操作の必要性が少ない。(バッチ処理をするにしても数年に1回位であり、中性子経済性や核燃料物質の節約にあまり意を用いなければ、炉寿命期間中、再処理無しで済む可能性もある。)
燃料塩の追加や濃度調整が可能であるから、余剰反応度を殆ど持たせず、低インベントリで、核的逸走事故の恐れのない炉が設計できる。
燃料発熱体自体が膨張係数の大きい液体であり、黒鉛はほとんど膨張しないので、大きい即発性の負の温度係数が期待できる。
233U-Thサイクルとすれば、超ウラン(TRU)元素は殆ど生じない。Pu-Thサイクルの場合でも、Pu-U固体燃料炉に比較してTRU元素の生成が少なく、Puの消滅速度が大きい。
廃棄物、特に再処理に伴う廃棄物発生量が少ない。
液体燃料としての溶融塩は安定で取り扱いやすいものであり、常圧のまま使用できる。(沸点は1400℃以上、炉心出口温度700℃位となる。)
10 炉心内の減速材兼構造材は微小孔等方性黒鉛で、炉容器及び配管・機器等は改良型ハステロイN合金(Ni-Mo-Cr-Fe合金の一種)で作られ、それぞれ炉寿命期間中、燃料塩との両立性が良く、十分な構造強度を維持できる見通しである。
11 燃料が炉心外部にも循環するので、実効遅発中性子割合が下がるという問題と、ポンプ不具合時等の対処問題がある。また、安全審査上の解析評価項目については今後の検討に待たねばならないが、万一燃料塩が炉外に流出しても再臨界の恐れは全くない。また、定義にもよるが、過酷事故は想定しにくい。
12 233Uに付随して発生するガンマ線により、核拡散抵抗性上のすぐれた特長がある。
13

トリウムの利用により、核燃料資源をウラン以外に拡張でき、またプルトニウムの利用・消滅にも使えるなど、核燃料の多面的運用に寄与できる。


図1.小型溶融塩炉 FUJI 鳥瞰図 (タービン発電機の下が復水器)
図2.溶融塩炉 全体構成 (復水器は省略)
図3.FUJI 一次系 立面図
図4.FUJIカットモデル


中性子源
 原子炉を起動する時には、最初の中性子が必要です。、米国熔融塩実験炉MSREでは、現在の軽水炉と同じく、中性子を発生する物質を中性子源として使ってました。その後、MSBRのような実用炉の設計においては、燃料自体が発生する中性子が使えることが分かり、毎秒10の7乗個の中性子が発生すると評価されています。
具体的には、U233とU234から出てくるアルファ粒子が、熔融塩の中のLi(リチウム)、Be(ベリリウム)、F(弗素)に吸収されて中性子が出てくる核反応(下記)により、中性子が発生しますです。

 Li7 (α,n) B10     
 Be9 (α,n) C12     
 F19 (α,n) Na12

参考文献:ORNL-TM-2685「Inherent Neutron Source in MSRE with Clean 233U Fuel」




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