IAEAでの初のトリウム溶融塩炉会議の概要
   Technical Meeting on the Status of Molten Salt Reactor Technology

2016年11月11日記

国際原子力機関(IAEA)は、2016年10月31日〜11月3日、トリウムを用いた熔融塩炉に特化した初めての国際会議をウィーンの本部で開催し、研究開発の加速に向けた議論を始めた。IAEAは今までトリウム利用炉や小型炉の会合を開いたことはあるが、熔融塩炉に特化した国際会議の開催は初めてである。

欧州各国や米国などの先進国と、中国、インド、インドネシア、日本のアジア諸国など、約20カ国の溶融塩炉専門家35名が参加し、その他、IAEAよりも数名が同席して、合計28の講演がなされた。なお、講演のスライドは下記のIAEAサイトで公開されている。
https://www.iaea.org/NuclearPower/Meetings/2016/2016-10-31-11-03-NPTDS.html

日本からは筆者(当NPOの吉岡律夫)が参加し、寺井隆幸氏、山脇道夫氏、木下幹康氏との連名で、熔融塩炉FUJIの設計と、日本の各機関の活動を講演し、多くの質問があった。

本会議は、昨年夏の「溶融塩技術の原子力への展開」研究専門委員会での審議の結果、昨年末に寺井隆幸氏がIAEAでの準備会合に出席した際に「原則、各国一人ずつが当該国の活動を紹介する」という提案を行なった経緯がある。なお、会議を非公開としたのは、IAEAが広い会場を手配できなかったからである。

会議の冒頭に、IAEA原子力開発課のStefano Monti課長より「熔融塩炉は、高温で高効率であること、低圧で安全性も高いこと、高レベル廃棄物低減が見込めること、液体燃料なので燃焼度制限がないこと、核燃料サイクルの融通性が高いこと、などの多くの利点がある。IAEA加盟国での関心も高まって来ており、今回、初めて熔融塩炉に特化した会議を開催できたのは喜ばしい。今回の会議では、研究開発の先進国から情報を提供して貰い、開発課題を共有すると共に、今後、実用化を進めようとする国々との対話の場を提供したい」との趣旨説明があった。

それに引き続き、各国の代表者が自国の活動を紹介する講演を行なった。それらの内容は、既にGIF(第4世代原子炉国際フォーラム)の熔融塩炉運営委員会などで聞いていたものが多かったが、最大のニュースは、インドネシアが熔融塩炉プロジェクトを開始し、2020年代の建設を目指す、という同国ワリス教授の講演であろう。インターネット上には、インドネシアのコンソーシアムが、米国の熔融塩炉ベンチャーのThorCon社と提携したというニュースが流れていたが、本会議にはインドネシア規制委員会・副委員長を含め、6名もの参加があり、IAEAへの期待が大きかった模様である。
規制当局の出席は他にカナダからで、新型炉の許認可について講演した。これには、カナダのベンチャーが、政府資金を得て、熔融塩炉の予備審査を申請したことが関係しているのかも知れない。

その他に注目される講演トピックとしては、米国政府が熔融塩炉ベンチャーに予算支出した決定を受けて、オークリッジ国立研究所(ORNL)のDavid Holcomb氏が、同所の発明である熔融塩炉開発を正式に進められることになり、意気込んでいたことである。既に、米国原子力学会(ANS)に新規に3件の標準委員会を設立したとのことである。
さらに、中国・上海応用物理研究所(SINAP)副所長の戴志敏氏が、熔融塩実験炉2基の建設予定地を山東省の海陽市に変更したことなどを述べた。
また、米国イリノイ大学のThomas Dolan教授が、来年、熔融塩炉の教科書「Molten Salt Reactors」を出版することを明らかにした。本書には日本から筆者らも200頁ほどを寄稿している。

なお、IAEAは今回の会議開催に当り、FHR(黒鉛被覆燃料の熔融塩冷却炉)も対象としていたが、該当する講演は米国カリフォルニア大学の1件のみで、他は全て熔融塩燃料炉であった。

その他、会場では、IAEAが今年9月に小型炉の特集本「Advances in Small Modular Reactor Technology Developments, 2016」を発行し、今回初めてFUJIを含め数件の熔融塩炉を紹介しており、9月のIAEA総会で各国に配布したとの案内があった。なお、現物1冊を原子力学会に寄贈した。

なお、講演の他に、講演終了後のレセプション会場で数件のパネル展示があったが、提供されたアルコールの為か、皆、相互懇談に忙しかったようだ。

会議の最後に、原子力部のDohee Hahn理事より「熔融塩炉は高温が可能で高効率である。更に安全性も高いので、今後の原子力として向いている。IAEAは、今後、予算化を図り、熔融塩炉に関する国際プロジェクトを開始する」と宣言した。なお、これらの方針は、9月のIAEA総会で加盟各国に説明されたとのことである。

そして、担当者が具体的に、各種データベースの作成や、安全指針策定、核拡散抵抗性やベンチマーク計算など10件程のテーマを提示した。これに対し、米仏露などの研究先進国は、既にGIFの場で情報交換をしているものの、国際的に認知されればありがたいというスタンスである。一方、上記のインドネシアと中国・インドは「IAEAの支援を歓迎する」との意見を述べた。

以上のように、今後IAEAとして、研究先進国間の情報交換は勿論、アジア諸国の支援を行なうという方向が決まり、世界の熔融塩炉開発に更なる拍車がかかったと言える。



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