軽水炉でプルトニウムを燃やすと、どれ位、Puを減らせるのでしょうか?

トリウム熔融塩原子炉はPuを効率良く消滅できる、と書きましたが、Puは、他の炉型、例えば軽水炉でも燃やせます。では「軽水炉でPuを燃やすと、どれ位、Puを減らせるのか?」という考察を試みました。

1)U燃料のみ(プルサーマル無し)
日本には軽水炉が55基あって、毎年、20トンずつ燃料を装荷、つまり、毎年20トンを取り出している、とします。年間で約1000トンが取り出されるわけです。取り出し燃料の中には、1%のPuが含まれるので、毎年、10トンのPuが出てきます。
再処理しないとすると、50年か100年もすれば強いガンマ線は減衰し、地中にPu鉱山が出現する訳です。(このことは、昔、IAEAも言っていて、原子力工業に記事を書いたことがあります。)

2)全量プルサーマル
一方、再処理をして、上の10トンのPuを100トンのU238で希釈して、プルサーマル燃料にして、装荷すると、数年後には、およそ6割になるので、日本全体では、4トン減らせます。
(ネットの生産量では10-4=6トン)

3)PuをThと混ぜて使用。
上の10トンのPuを、100トンのTh(トリウム)で希釈して、Pu-Th燃料にして、装荷すると、数年後には、およそ半分(5トン)に減少して、残りは5トンになります。(上の100トンのThからはPuが生まれないので、2番より、1トン分のPuが削減できます)。つまり、日本全体で年間、5トンの削減ができます。
(ネットの生産量では、10-5=5トン)

以上を纏めると、
 1)プルサーマル無し =Pu:10トン生産
 2)プルサーマル   = Pu:6トン生産
 3)プルトリ・サイクル= Pu:5トン生産。
このような時代が50年100年と続くと考えると、文字通り50歩100歩で、消滅からは遠いと言えます。

なお「軽水炉でも、減少はしているのだから、繰返せば、最終的にPu消滅ができるのでは?」と思われるかも知れませんが、固体MOX燃料の再処理は困難です。
一方、熔融塩炉は、燃焼制限というものがなく、炉内で引き続き、燃焼させることができます。

(以上、2010年3月記)


もう少し、正確に計算してみました。(以下、2018年に記載)

@熔融塩炉FUJI-Pu FUJI-Puは、100万KWeで1年間全出力で運転した場合は、全Pu量で約900kgが消滅する。
なお、FUJIは熱効率が高いので、軽水炉と同じ電気出力で比較するのではなく、同じ熱出力(核分裂量)で比較してみると、上記数値は1割以上大きくなり、更にFUJIの優位性が増す。
A全MOX炉(大間ABWR) 100万KWeの全MOX-ABWRを想定する。
1年間全出力で運転した場合は、全Pu量で約400kgが消滅する。
FUJI-Puに比べて消滅量が小さい理由は、母材がUなのでPuが再生産されること、炉心設計の観点からU燃料棒も必要なこと、固体燃料なので燃焼度に制限があること等による。
なお「大間ABWR(138万KWe)は年間1.1トンの核分裂性Puを消費できる」という説明が見受けられるが、この値はPuf投入量であって、消滅量ではない。
Bプルサーマル
(1/3プルサーマル
MOX燃料が炉心全体の1/3というプルサーマルを想定する。
全Pu消滅量は上記全MOX-ABWRの1/3の約130kgと推定される。
なお、U炉心のBWRでは、毎年約230kgのPuが生成するので、その2/3だとPuが約150kg生成する。
従って、1/3プルサーマルでは、炉心全体では年間約20kgの増加である。

注記:ここでは簡単化の為に、1年間の連続運転期間を想定した(40年間の総計を求める場合は、定期検査の為の停止期間を含める必要がある)。





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