4.トリウム熔融塩核エネルギー協働システムの現実的な開発手順

4.1. 世界への展開
 苛酷事故の心配やPuテロの恐れのない小型発電炉は、社会受入れに理想的です。Th資源の独占はありえず、自由に全世界に展開できます。各発電炉の寿命終了後は、核燃料塩は世界に二、三十個所作られた地域センター《AMSB,化学処理工場などを集中管理》に持帰り、リサイクルされます。核物質輸送量・廃棄物量の軽減にも有効です。
 実用化の初期には、現在では邪魔となったPu(および濃縮U)処理を引受け、初装荷用燃料として利用できます。

4.2. Thサイクル時代への円滑な移行策
 Puは、我々の FUJI/AMSB で有効に燃やしつつ消滅でき、同時に233Uを生産して本格的なTh利用産業を開始できます。まず、次の三計画を順次に実施してゆけば良いのです。

D−計画  使用済み固体U燃料を弗素化し、Puと超U元素の弗化物塩を分離する。この乾式溶融塩技術は、フランスが開発した弗素化技術を基礎に、旧ソ連の高速増殖炉燃料再処理用のFREGATE計画【仏・チエコが協力】としてほぼ完成していました(チェルノブイリ事故でFBR計画と共に放棄)。水や有機溶剤での核臨界問題がなく、また固体酸化物燃料に作り戻す必要がないので、極めて単純小型かつ経済的な装置となります。軍用にならない不純なPu弗化物塩を得ればよいからです。複雑かつ高価で本来軍用的なピューレクス再処理工場は、次第に消滅させるべきです
F−計画 FUJIの開発を十数年で終えたならば、上記のPu弗化物塩を燃料としてPuを燃焼処理しつつ、同時に233Uを 生産しつつ発電します。Pu処理を加速するには、燃料塩から適度に233Uを分離し、Pu塩を追加・燃焼させるのが適切です。得た233Uは新しいFUJI発電所の始動に利用します。
A−計画 少し遅れて2030年頃までにAMSBを完成し、233Uの 生産増殖の実用化を開始します。進展を始めた THORIMS−NES がより多くの233Uを要求する段階だからです。初期には、Pu燃焼型のAMSBによって、消費Puの量以上(二〜三倍)のより強力な233U生産が実現できるでしょう。


 現在の核エネルギー技術では、とても今世紀の環境汚染対策となりません。私達は膨大な規模のトリウム溶融塩発電炉を、世界に展開すべきです。上記の計画によるならば、20〜40年かけて既存のU−Puサイクル原発から発生するPu処理を請負いつつ、自動的にトリウム溶融塩増殖サイクルへの円滑な移行を推進できます。
 2060〜70年頃には太陽エネルギーの本格利用を始め、核エネルギー後退期に入ることも考えられます。従って、2065年頃からそれを考えた核産業の変更ないし収拾策が必要となるでしょう。詳細な検討を始めていますが、Th溶融塩燃料サイクルによる核廃棄物消滅処理にも最も柔軟巧妙な対応ができそうです(3.6節参照)。

4.3. 具体的な開発手順:日・米・ロシア三国共同計画

[A]技術の基礎。
 まず米国オークリッジ国立研究所(ORNL)の良く配慮された合理的開発努力(1947〜76年頃)に基づいて、溶融塩実験炉 MSRE(熱出力7500KW)が 四年間無事故で見事に運転されています(1965〜69年末)。この民間的研究開発の膨大な基礎データは全て公開されています。その他の国の研究開發については第5章で紹介します。
 次に、溶融塩炉と同じ"高温融体炉"である液体ナトリウム(Na)高速炉技術への巨大な国際投資成果が 、機器開発に流用可能です。溶融塩は同時に燃料でもあるが、機械工学的にはNaの強い化学活性と熱衝撃性が共にないので、液体Na炉の経験は充分余裕をもって活用できます。
 さらに、溶融塩は理想的なイオン性液体であるために、技術上の難問が発生しても、その理論的対応予測が充分に行えるのも重要な利点です。イオン間の静電相互作用が主体で、古典物理化学(電気化学)が有効だからです。過去の実績がそれを保証しており、今後の開発の成功を約束します。


[B]具体的な開発計画

miniFUJI−プロジェクト
溶融塩発電炉の長期運転による総合的技術実証
F-計画の第一歩として、ORNL・ MSRプログラム関係者の支援をえつつ、MRSEとほぼ同規模ですが、発電可能なパイロットプラント(超小型原発):7千 kWe ミニFUJI(炉本体直径 1.8m、高さ2.1m)を、7年間約300億円で建設し運転開始します。私達は概略設計を終えています。MSREは発電を行っていませんでしたが、これは発電します。3年前からロシアの Inst.Technical Physics)(Snezhinsk、Chelyabinsk-70)が、所長以下積極的に協力を提案してくれ、建設予定地も所内(公開地域)に選定しています。
溶融塩化学処理法・廃棄物再利用開発 計画 チェコ・ロシア・フランスの協力をえつつ、FREGATE計画の再建・単純化を開始し、固体U燃料の化学処理法をFUJI完成の頃までに整備実用化させます。これがD−計画の主体であり、さらに燃料塩やターゲット・ブランケット塩の化学処理工程、廃棄物処分法・再利用法の開発を行います
FUJI−プロジェクト
10〜30万kWeの実用小型発電炉の実証
I.に続く数年後(即ち発足から約12年後)に、FUJIを約2、000億円で建設・運転開始します。次いで更なる設計改良・高温炉化・炉大型化などを進めます。
AMSB−プロジェクト
核燃料生産増強用施設
平行して、核燃料生産増強用のAMSB開発を進め、2025年頃の技術完成を目指します。大容量の加速器・入射孔技術開発以外、大きな技術的困難はないと考えています。しかし経費は1〜2兆円を要するでしょう。以後、技術改良、他の増殖方式の検討・研究開発にも努めます。これが、上記のA−計画に相当します。
THORIMS−NES総合計画 上記の諸プロジェクトを総括して世界に"トリウム溶融塩増殖サイクルシステム"を展開しなければなりませねん。開発の諸段階に応じて、また世界諸国の地域性に配慮して、適合したシステムを開発するようにシステム構想の改善・柔軟化をはかります。即ち、Pu燃焼小型発電炉は今から約15年後に実用化に入り、全システムの一応の完成は約25〜30年後になると想定しています。総研究開発資金は約2〜4兆円と見込んでいます。


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