使用済み燃料処理に関する提案

2012-6-15

NPO法人「トリウム熔融塩国際フォーラム」

1.初めに

 現在、国内では、@今後の原発割合をどの程度にするか、A高速増殖炉開発を進めるか、B再処理をするか、の3点が議論されている。今後、原発をどの程度の割合にしようとも、既に大量の使用済み燃料が蓄積され、また、今後も増え続ける。また、高速炉を止めるということは、再処理から発生するPuの行き場がなくなることになり、再処理を止めざるを得なくなる。再処理を止めれば、軽水炉の使用済み燃料を最終処分(地下処分)が極めて困難な国内事情では、軽水炉を停止しなければならなくなる。

 上記のいずれの場合でも容易な選択ではない。その理由は、Puが原爆の材料であり、かつ半減期が2万年以上なので、Puを長期間、安全に保管することは日本の国土では極めて困難な為である。従って、Puの消滅・処理の方策を検討する必要がある。

 Puの消滅処理に対しては、最も有効な代案はトリウム熔融塩炉である。熔融塩炉は、1960年代に米国で実験炉が建設され、4年間の順調な運転実績を示した。これらの技術をベースに中国では2011年より下記のような開発計画が進行中である。また、インドも2012年にトリウム熔融塩炉の研究を開始したとのことである。
(2015年までにゼロ出力臨界実験炉を建設して臨界達成。2015年までに平行して建設する2MWt実験炉で熱出力2MWt達成。2020年までに電気出力10MWe実験炉を建設して臨界達成。2030年までに電気出力100MWe実証炉を建設して臨界達成)

2.熔融塩技術による処理提案

 軽水炉使用済み燃料を熔融塩化学処理プラントで再処理し、Puなどを抽出して、熔融塩炉で消滅処理することを提案する。




 その為に必要な熔融塩原子炉開発計画、および軽水炉使用済み燃料の熔融塩化学処理施設の開発計画と、消滅処理計画の概要を示す。


 上記の開発(@A+CD)に必要な予算は、15年間で約2200億円である。なお、Bは売電により賄えるので建設費用は別途とした。また、Eも軽水炉側の処理費用なので建設費用は別途とした。

3.熔融塩炉計画

 最初の実験炉miniFUJIは電気出力1万KWe(10MWe)、熱出力25MWtとする。米国実験炉MSREの設計熱出力10MWtの2.5倍であり、このサイズでもニーズはあると思われるが、次のステップの10〜30万KWe発電炉が小型商業炉(FUJI)の標準的なサイズと考えられる。

 100万KWe(1GWe)軽水炉から1年間に排出される使用済み燃料は約20トンであり、その中に含まれる核分裂性Pu(Puf=Pu239+Pu241)は約0.65%(約0.13トン)である。日本の原発総数50基、総発電設備容量を45GWeとすれば、毎年約900トンの燃料が取り出され、その中に約6トンのPufが生成されていることになる。軽水炉の運転寿命を40年とすれば、累計で36,000トンの使用済み燃料が発生することになる。なお、既に、半数の17,000トンが取り出されている(2011年現在の内訳:原発内に14,200トン、六ヶ所村に2,860トン、海外再処理分が6,400トン)。

 この36,000トンの使用済み燃料には、合計で約240トンのPufが含まれている。Pufは原爆の材料であり、かつ半減期が2万年以上なので、大量のPufを長期間にわたって安全に保管することは日本の国土では極めて困難であり、消滅・処理の方策を検討する必要がある。

 所で、25万KWeのトリウム熔融炉では、年間、0.25トンの核分裂性Puを消滅処理できる(核分裂性ではないPu240やPu242も他の核種に転換し、最終的に消滅できる)。従って、24基の25万KWe熔融塩炉を建設すれば40年間で上記の240トンのPufを処理できる。あるいは、半数の12基を建設し、80年間にわたって処理する案も考えられる。


4.熔融塩化学処理施設計画と消滅計画

 軽水炉燃料の再処理(熔融塩によるU、Pu等の分離)施設を開発・建設し、軽水炉使用済み燃料の処分を行なう必要がある。

 最初に、実用化のための研究施設を建設する。本分野はチェコ・ロシアでの研究が進んでおり、両国との共同研究が考えられる。また、軽水炉燃料の大部分(95%)を占めるウランの抽出技術に関しては、日立・JAEAなどが国の予算で実験的研究(弗化物熔融塩揮発法研究)を行なったことがあり、その成果も活用できると考えられる。

 次に、年間100トンの軽水炉燃料を処理できる小規模の熔融塩化学処理プラントを建設し、FUJIでの消滅処理実証実験を行う。

 最終的に、年間900トンの軽水炉燃料を処理できる商業プラントを建設し、Puなどを抽出して、商業熔融塩炉で消滅処理する。Puの他、半減期の更に長い超ウラン元素(ネプチニウムなど)も消滅処理できる。なお、半減期の短い放射性廃棄物については、数百年の保管で減衰し、安定な状態となる。また、本プラントは熔融塩炉を廃炉にする際に取り出されるトリウム熔融塩も処理できる。





トップページへ戻る












SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送