軽水炉からの再処理Puで原爆は作れるの? 

トリウム熔融塩炉でPuを消滅させる必要性は、軽水炉使用済み燃料から取り出されるPuが原爆材料になるからです。
しかし、原子力百科事典ATOMICAを見ると「原爆材料にならない」と書いています(結論で示すように、この記載は誤りです)。

原子炉の使用済燃料からの回収Puには各種のPu同位体が色々な割合で含まれる。この質的変化によってPu239が大部分を占める核兵器級Puとは異なり、このままでは核兵器用の材料になり得ない。
 http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=13-05-01-07

実際、日本では2000年頃まで「原子炉級Pu(軽水炉使用済み燃料から取り出されるPu)で原爆が出来るか否か」と言う議論がありました。学会の結論は出ていないものの「実質的には出来ない。できても核兵器としての威力はない」というムードだったように思います。

しかし、実は、米国で使用済み燃料から取り出されたPuで1962年に原爆実験を行ない、20キロトンという長崎原爆並みの威力を持つ原爆が作れることを実証していました。そのことは1977年に公表されており、カーター政権がPu利用の国際規制を厳しくする政策を打ち出した背景だったようですが、日本では殆ど認識されませんでした(下記文献)。
「Additional Information Concerning Underground Nuclear Weapon Test of Reactor-Grade Plutonium」USーDOE、https://www.osti.gov/opennet/document/press/pc29.html
なお、この原爆実験で使われたのは軽水炉使用済燃料ではなく、英国の黒鉛炉からの再処理Puです(下記)。 http://www.ccnr.org/plute_bomb.html

日本のPu利用を推進する団体とされる「原子燃料政策研究会」が2001年に「原子炉級プルトニウムと兵器級プルトニウム」という報告書を出しています。

米国資料を検証した結果、「原子炉級Puでも1キロトン程度の原爆は作れる。また、核融合を併用したブースター型原爆(注1)であれば、原子炉級Puでも(もっと威力を高められ)十分に役立つ、と結論できる。
今回の調査で筆者自身反省したのは「原子炉級Puで核兵器を作ることは頭から不可能である(★)と検討を怠っていたこと」である。http://www.cnfc.or.jp/j/proposal/reports/

(注1:2013年に「北朝鮮がこの型の原爆実験をしたのではないか?」と新聞で話題になりました)
(★:お歳を召した原子力関係者には、そう信じている方が多いようです)

その他、1998年に米国議会関係者が作成した資料(下記)があり、その中で、上記★の背景を説明しています。

なぜ、原子炉級Puで核兵器を作ることは不可能、という間違った説が流布したのか?、それは当時、NPT(核不拡散条約)を締結する代償として、軽水炉を世界に提供することになったが、米国はNPT条約で、使用済み燃料からの回収Puで原爆を製造できるということを教えることが違法になってしまった為である。また、Pu240が高速中性子では核分裂する事実が無視されたこともある。「Reactor-Grade Plutonium Can be Used to Make Powerful and Reliable Nuclear Weapons」 http://www.fas.org/rlg/980826-pu.htm

他には、「Reactor-Grade and Weapons-Grade Plutonium in Nuclear Explosives」という米国DOE資料の要約(英語)もあります。http://www.ccnr.org/plute.html


以上から「原子炉級Puで十分な威力を持った核兵器を作ることは可能」というのが世界の常識と言うことです。
ご参考まで・・・(2013年6月記)






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