プルトニウムの放射性毒性

核テロの一種に、いわゆるダーティボム(放射能散布爆弾)があります。この危険性は日本では殆ど認識されていませんが、核爆弾と同様に、重要な問題です。
(米国議会は88頁の報告書を出しています。
https://www.fas.org/sgp/crs/nuke/R41890.pdf

放射線の人体への影響に関しては、外部被曝と内部被曝があります。内部被曝に関する放射性毒性は、水や食物と一緒に経口摂取した場合よりも、呼吸で吸入した場合の方が高い場合があります。その理由は、放射線の内、アルファ線は飛程が短く、体内に入った場合に影響が大きく現れ、また、肺等に吸入した場合は体外へ排出されにくいからです。

プルトニウム(Pu)はその典型例で、Puの粉末(直径5ミクロン:5x10e-6m)を吸入した時の線量換算係数(DCF)は、ICRP(国際放射線防護委員会)によれば、経口摂取した場合の約100倍の3.2x10e-5 Sv/Bqです。ここで、線量換算係数DCFとは、放射能が1ベクレルの放射性物質を摂取または吸入した時の人体への影響(シーベルト単位の被曝線量)を求める為の係数であり、放射性毒性は次式で計算できます。

[放射性毒性] = DCF x [放射能]

なお、DCFは、物理的な半減期と、人体から排出される生物学的半減期の両方を考慮して定められています。また、成人の場合、50年の余命を想定し、寿命中の影響を考慮しています。所で、幼児は成人より放射線の影響を大きく受けますが、摂取量も少ないため、DCFは通常、成人で代表させることができます。

また、放射能とは、1秒間の物質原子の崩壊数で、崩壊定数λと、原子数Nから決まり、[λ・N]で計算できます。

Pu239について、以下に計算してみました。
 239gのPu239の原子数N=0.623x10e24個(1モルの原子数=アボガドロ数、10の24乗個)
 λ(崩壊定数)は、Pu239の半減期(24,000年)から求められます。
 λ=0.693/(24000x365x24x60x60) = 9.16x10e-13 sec-1
 放射能[λ・N]= 9.16x10e-13 x 0.623x10e24 = 5.71x10e11 ベクレル(または毎秒の崩壊数)
 [放射性毒性] = [3.2x10e-5 Sv/Bq] x [5.7x10e11 Bq] = 1.82 x 10e7 Sv

以上から、239gのPuがあれば、1820万人に平均1Svの被曝をさせられる計算になります。

つまり、角砂糖1個程のPu(PuO2で10g程)を空中散布すれば、76万人に1Svの被曝をさせられる計算になり、東京都の人口(1300万人)で割れば、一人当たり約50mSv(ミリシーベルト)であり、この数字を聞いた途端に東京都民は逃げだし、無人の街となるでしょう。上記の50mSvは余命50年間の影響を示す値なので、年間当りでは一般市民の被曝限度(1mSv)と同程度ですが、一瞬で生涯被曝が確定する訳で、逃げ出すのは当然です。

更に、Puはセシウムのようにガンマ線を殆ど出さないので(★)、散布装置を製造するのが容易で、かつ製造後も検知が殆ど不可能な点も問題です。また、爆発させる必要さえもありません。
(★:セシウムは約1MeVの強いガンマ線を出します。一方、プルトニウム(Pu239等)は、アルファ線を出す時に、ガンマ線も出しますが、セシウムの数十の一の非常に弱いガンマ線です。)

なお、付記すると、死に至る被曝量は数Svとされているので「角砂糖5個分で日本人全員死滅」というネット上の噂は真実ではありませんが、影響が大きいのは確かです。

ICRPによるPu239のDCFデータ
花粉や黄砂とほぼ同じ大きさの直径5ミクロン粒子の他、更に細かい1ミクロン粒子のデータも載っている。


(2015年9月、記事掲載)


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