(1) 溶融塩とは?(熔融塩とは?)

熔融塩(Molten Salt)」とは「塩が高温で融解してできた液体」のことです。また、「塩」とは一般に酸とアルカリとが化学的に中和しあって生ずる化合物で、最も身近な塩に食塩(NaCl)があります。食塩を高温で溶融させれば溶融塩の1種になります。

従って、食卓塩をフライパンで高温に熱すると、さらさらして水のような透明な液体になるはずです。これがNaCl溶融塩で、水のように見えますが、水は含んでいません。なお、食塩の融点は800度以上なので、勿論、ペットボトルに入れることは出来ません。

上に書いたように、食塩の融点は800度以上なので、実際には、石英ガラスのビーカーを使うなどする必要があります。その代わりに、「塩化アルミニウムナトリウム(NaAlCl4)」、つまり、NaClとAlCl3を半分づつ混ぜた塩の融点は約160℃、とのことなので、こちらを使うか、または、「AlCl3(塩化アルミニウム)」単体の融点は190度なので、これだと、普通のガラスビーカーで、下に電熱器などを置いて加熱すれば、簡単に熔融塩を作れます。

(このサイトでは、塩が水に溶けるのを「溶解」とサンズイの漢字で書くのに対し、高温で融解した塩なので、「熔融塩」と火偏で書いています。)


ナトリウムNaも塩素Clも、それ自体は化学的に最も活性な物質ですが、反応によりNaClとなると、不活性で安定な化合物になります。

熔融塩原子炉で用いられる熔融塩は、LiF-BeF2というフッ化物熔融塩(通称フリーベと呼ばれる)で、この物質も不活性で安定な化合物です。また、フリーベの融点は、トリウムの含有量によって変動しますが、約500度です。
なお、フリーベの沸点(気体になる温度)は1400度以上であり、事故時でも沸騰することはありません。

2012年に、ある市民の方から、次の質問を受けました。

減速材に黒鉛を使うとの事ですが、溶融塩FLiBeと高温で反応しないのでしょうか。黒鉛やカーボンはフッ素と簡単に反応して、弗化カーボンを生成致しますが……

金属ナトリウムNaや、塩素Clは、単独では非常に化学的に活性で、Naは空気中で酸化(燃焼)しますし、Clは毒ガスです。
所で、Naは電子を一個放出すれば化学的に安定になり、一方、Clは逆に電子を1個貰えば安定になります。つまり、Na(+1価イオン)と、Cl(−1価イオン)は各々化学的に安定ですが、静電力で引き合う状態となります。これが食塩ということで、非活性で安定な化合物となる訳です。
この状態のままで高温にしたものが熔融塩で、やはり化学的に非活性な化合物となります。

ご指摘の弗素Fも、塩素と同様に、電子を一個貰いたい側、つまり化学的に活性なわけで「元素中で最強の酸化剤」と言われており、殆どあらゆるものを酸化します。例えば、炭素を酸化してCF4が出来ます。
しかし、フリーベ(例えばLiF)の状態では、Fは既にLiから電子を1個貰っており、安定な状態になっています。

(以下、高校化学なので、飛ばしても構いません。)
これは化学反応が、最外周の電子軌道の電子数で殆ど支配されるためです。
熔融塩では、Liは電子を1個放出してヘリウムと同じ電子構造になり、一方、Fは電子を1個貰ってネオンと同じ電子構造になります。
ヘリウムやネオンは最外周の電子軌道の電子が満たされており、化学的に不活性な元素ですが、Li+もF-も同様に化学的に不活性となる訳です。
つまり、酸化能力(炭素と結合する能力)を失っています。
ですから、フリーベの中の弗素が炭素は勿論、その他、原子炉容器や配管を酸化することはありません。
なお「では、弗素が分離したらどうなるのか?」という質問が来そうですが、上に書いたように、フリーベの中では、LiとFは静電力で引き合っているので、簡単に分解することはありません。

以上のように、熔融塩は、各元素(原子)がイオンとなっており、正イオンと負イオンが、静電力(クーロン力)で引き合う形になっています。


所で、原子炉の中では中性子やガンマ線が飛び交っていますが、これらは、電気(電荷)を帯びていないので、クーロン力に影響しません。
つまり、熔融塩が原子炉内で分解するのは、核分裂反応など、原子核自体が変化した場合だけで、それ以外は、熔融塩が分解することはありません。
また核分裂した場合も、殆どの核分裂生成物は再びイオン化し、熔融塩となります。熔融塩燃料が原子炉内で分解しない(損傷しない)のは、これらの理由からです。

一方、軽水炉等の固体燃料では、中性子照射などにより、結晶体である酸化ウランや燃料被覆管が脆化(劣化)していきます。
従って、固体燃料では、実際の原子炉で燃料として使う前に、実験用原子炉などで照射実験することが必須です。

以上が理論的な仕組みですが、米国の熔融塩実験炉MSREで、フリーベを使用し、4年間の原子炉運転がなされました。炭素はもちろん、原子炉容器・配管などに腐食はありませんでした。その結果は、米国国立研究所の文献として、公開されています。

このように、熔融塩を適切に管理すれば、腐食の問題は避けられます。(但し、学校の化学実験などのように、熔融塩管理が不十分だと、空気(酸素)や水分が混入し、(鉄板が海水で錆びるのと同じ仕組みで)腐食は起こりえます。)

フリーベ(Wikipediaより)



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